着物の用語集




長着 (ながぎ)
キモノと見なした場合は、広く和服全般をさすが、仕立て業者の間では、長着を長物、羽織やコートなどの丈の短いものを半物と呼び区別している。

名古屋帯 (なごやおび)
結びの部分を普通幅にし、残りを半幅に仕立てた帯。

梨地織 (なしじおり)
格子に似た織り方で、布面に梨の果実の表皮に似た外観を表わしたもの。

棗椰子 (なつめやし)
ヤシ科の常緑高木で、インド西部・メソポタミア地方の原産。

難ぐり (なんぐり)
染難、織難が発生していないか検品すること。加工の各段階で反物を巻きながら、難点を見つけるだけでなく、それらの原因になる要素はないかもチェックする。早期発見により、的確な処理で、未然に防ぐことができる。



膠 (にかわ)
動物の皮・骨・腱などを水で煮て得た液をさらに煮つめ、干し固めたものがゼラチン。水で煮ると溶け、粘着性のある液になり、冷えると凝固する。この性質を利用し、顔料などを生地に固着させるのに使用する。

錦 (にしき)
色糸を用い、文様を織り出した絹紋織物の総称。綾錦ともいい、織物の中で、豪華で美麗なものを指す。中国の秦時代に創始されたという。日本では、正倉院・法隆寺などの遺品に見られる。古くは京都で生産され、江戸時代中期以降、加賀(石川県)・越前(福井県)・丹後(京都府北部)・郡内(山梨県)・仙台(宮城県)などでも生産されている。



縫込み (ぬいこみ)
衣服の縫製に際して布の余りを裁切らず、縫込んでおくこと。又、縫い込んだ部分。仕立直しの時に利用できるので便利。衿先や衿付けの縫込みは、衿を整える芯の働きも兼ねる和服独特の処理をする。

縫締め (ぬいじめ)
紋染の1つ。文様の部分を縫った糸を引き締めて染める方法。文様の輪郭だけを縫い絞るものや、一定の区画を縫い締めて袋状にし、その部分にも糸を巻いて絞るもの、布を二つ折りにし、浅くつまみ縫いにして絞るものなど多数ある。

縫代 (ぬいしろ)
縫い目より外側の、外から見えない不要な部分。洋裁と異なり、切り落とさないので、解いて端ぬいすれば、もとの一反にもどるという利点がある。

縫取り (ぬいとり)
一般的には、縫取りふうの織方を指し、部分的に絵・柄を織り込んだりする。また、刺繍によって文字や文様を繍う、刺繍技法をも指す。

濡描き (ぬれがき)
無線友禅の一種で、ぼかしの感じを強調して表現したもの。生地を濡らし、筆や刷毛で模様を手描染するので、滲みが生じる。色調が柔らかく、独特の味わいを生み出す。

濡蒸し (ぬれむし)
蒸しの方法の1つ。生地を乾燥させずに蒸すので、水分が多い状態で蒸し工程が行われるため、染料の拡散移行が容易となり、有効な発色効果が得られる。扱染〈シゴキゾメ〉など、多量の糊を使うものに向く蒸し方法。



撚糸 (ねんし)
1本または2本以上の糸にヨリをかける操作で、ヨリ糸ともいう。撚は糸の強度・伸長性・かたさ・太さ・光沢・丸さなどを決める主要因の1つ。



野毛 (のげ)
金銀箔を細長く切った切箔の1種。

糊糸目( のりいとめ)
糸目糊置の材料の1つ。もち米粉・ヌカ・石灰・蘇芳〈スオウ〉を混ぜて作った糊で、水ですべて流れ落ちる。



媒染 (ばいせん)
染色の際、繊維に染料が染着しない場合に、媒介することを媒染といい、媒介する薬剤を媒染剤という。天然染料で染める場合などによく用いられる。媒染剤を用いて繊維に染着させる方法を媒染染法と呼ぶ。

箔 (はく)
金属の持つ展延性〈テンエンセイ〉を利用して、薄い膜状になるまでたたいて延ばしたものを箔という。特に、金や銀は展延性にすぐれ、貴金属という高級感からも好まれ、古くから、箔の材料として用いられている。

箔くくり( はくくくり)
金彩加工の1つ。模様の輪郭などを金銀箔線で描いていく技法をいう。

刷毛 (はけ)
染色用具の1種で、染刷毛とも呼び、鹿毛、馬毛等で作られている。形状は、丸刷毛・平刷毛・小刷毛に分類される。丸刷毛=毛先が円形で、鹿毛を4手に括くることから四手刷毛〈ヨツデバケ〉ともいい、大小で大丸〈ダイマル〉・中丸〈チュウマル〉・小丸〈コマル〉と呼ぶ。引染、摺込用などに使用。平刷毛=毛先を手にして2枚の板ではさんだもので、敷糊や地入れ、引染などに適する。小刷毛=竹柄の先端に毛をはさんだもので、主に挿友禅用に用いる。その他に片端刷毛などもある。

羽尺 (はじゃく)
羽織用に織られた丈の短い生地の総称。

八掛 (はっかけ)
女性用の袷長着や綿入れなど、裾裏につける布。裾回しともいう。総丈を身頃4つ、衽2つ、衿先2つ、合計8つに裁ったことでこの名がある。

腹 (はら)
帯を締めた時、胴回りの前の部分のこと。太鼓に対する語。



引切 (ひききり)
引染技法の1つ。1色で引染したものをいう。

疋物 (ひきもの)
一般には小巾織物の二反分あるものをいう。

疋田 (ひった)
絞り技法では、鹿子と呼び、型紙を用いて、染料を刷毛で摺り込む摺疋田〈スリビッタ〉と、型疋田、筆を用いた手描きによる描疋田がある。また、糊防染を利用して染める糊疋田もある。

単(衣) ひとえ
単仕立ての長着のこと。夏物として、初夏から初秋まで着用する。

一越 (ひとこし)
織物では、経糸を1本、2本と数え、緯糸は一越、二越と数える。転じて緯糸に左撚〈ヨ〉り、右撚りの強撚糸を交互に用いた絹織物(縮緬〈チリメン〉)を指す。=一越ちりめん。

一つ身 (ひとつみ)
本裁ち(大人物)・中裁ち(四つ身)に対し、三つ身と共に小裁ちと称する。嬰児〈エイジ〉から2歳くらいまでの子供用の長着。後身頃を生地幅いっぱいにとるのでこの名がある。

一目鹿子( ひとめかのこ)
絞り技法の1つ。下絵に描かれた粒と粒との間隔を詰めて、細かく絞っていく技法で、小粒にくくるところに特徴がある。

雛形 (ひながた)
キモノを創る前に、実物を想定して図案に描く。下絵を描く前に描く製図。キモノの平面図に木炭などで描いたもの。

比翼 (ひよく)
比翼仕立てされた長着の下着にあたる部分。同形の布が2枚重なっているように見えるので、この名がある。本比翼と付比翼があり、本比翼は表着の裏地の縫代に比翼の縫代を一緒に縫い込んで仕立てたものを指し、付け比翼は取りはずしができる。現在の留袖は、付比翼のものが多い。

比翼仕立て (ひよくじたて)
2枚重ね(襲〈カサネ〉)を着たように見せる和服の仕立て方。衿・立褄・裾・袖口・振りの部分の下着を表着に縫い付け、重ね着のように見せる仕立て方。

平繍 (ひらぬい)
刺繍技法の1つ。広い面を縦・横・斜めに糸が重ならないよう平らに、隙間なく刺しうめる方法。主に平糸を用い、花・鳥など、多くの模様に用いられる。

紅型 (びんがた)
沖縄で生まれた独特な染め味を持つ型紙染で、強烈・多彩・華麗な点が特徴とされている。友禅染・江戸小紋と並ぶ日本の代表的な染色。現在では静岡・東京・京都などでも生産されている。



ふき
袷や綿入れなどの仕立て方で、袖口や裾の縁が、表布より裏布を少しはみ出させている部分。紋服以外は、袖口 2ミリ、裾 4ミリが標準。現在に残る特殊な例として、文楽人形の衣裳・歌舞伎衣裳・花嫁衣裳(打掛など)がある。

袱紗 (ふくさ)
進物の上にかけたり、包んだりするもので、大きさ・地質・文様は用途により異なる。現在袱紗と呼ばれているものは、祝儀・不祝儀用の祝儀袋を包むのに主に用いられている。風呂敷の小形のものを指す。紅・紫のちりめんや羽二重を単仕立てにしたものや、表と裏の生地を変えて袷仕立てにしたものなどがある。

袋帯 (ふくろおび)
略礼装に用いる女物の帯のことで、帯丈4メートル、幅約30センチの織り帯。近年、留袖などの礼装にも丸帯の代わりに用いられる。

布海苔 (ふのり)
海草類の1つ。乾燥させた後、煮て糊とする。マフノリが最高品質とされる。糊料として、引染や友禅の色挿しなどにもちいる。

文箱 (ふばこ)
書状などを入れる細長い箱。

振り (ふり)
袖付から袖下までの、あいた部分の名称。

振り違い( ふりちがい)
キモノを着た時に、左の内袖(前袖)、右の外袖(後袖)を指していう。

文庫 (ぶんこ)
キモノ・反物・袱紗などを包む紙。キモノを包むものは特に、小袖文庫と呼ぶ。



紅下 (べにした)
絹布を黒染する際、紅色で下染することをいう。こうすることで、黒色の深みを増す効果が得られる。また、藍で下染することを藍下〈アイシタ〉といい青みを含んだ上品な黒に染まる。

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